伝道の種類
ローマ1:14 -
伝道の歴史は,聖霊降臨による教会の誕生にさかのぼる(使徒2章).以來,教会の 歴史は,同時に伝道の歴史であったと言えるが,これはキリストの宣教命令に基づいて いる.これによると,伝道の対象は,「すべての造られた者」であり,その範囲は「全 世界」に及ぶ.従って,その対象,地域,目的,手段等による様々な伝道の形態が存在 するのもうなずける.幾つかの伝道の形態について取り上げたい.
1. 文書伝道.
⑴ 手紙伝道 - 個人的な手紙による通信伝道から始まる.その利点は,誰でもできると いうことで,口下手な人でも,文章なら大胆に意見を述べることができるのである.
⑵ トラクト伝道 - 文書伝道のうち最も手軽で,効果的なものである.トラクトは,各 家庭に配布されるほか,路傍伝道,キャラバン伝道などの有力な武器となる.
⑶ 聖書通信講座伝道 - 多くの人々が教会のない地方に住んでいる.聖書通信講座は, 求道者を指導し,信仰の成長を図るものである.
⑷ 教会ライブラリー - 信仰的な良書が多く出版されているので,教会ライブラリーを 設けるのがよい.伝道所のための巡回文庫や貸出文庫も,伝道に有効である.
⑸ 新聞,雑誌,機関誌の発行 - 新聞,雑誌等を定期的に発行することは,非常な勞を 要するが,その使命は大きい.あかしや説教,様々な話題を提供して伝道の助けとし ている教会も多い.
2. 家族伝道.
聖書には,家ぐるみの入信も幾つか見られる(使10:1-48,16:15,31-34).まず入信し た者が,自分の家族の救いのため名前を挙げて毎日祈り,自分のキリスト者としての あかしによって信頼を勝ち取り,人生の各節目の好機に適切な導きをする.
3. 児童伝道.
日本における教役者の回心年齢は14―28歳が約80%となっており,7―14歳に神の観念 が明確になり,13―19歳で信念が確立し,15―23歳で受洗するのが一般的である.これ を見ても,児童は感化,影響を受ける可能性の大きい時期であることがわかる.
4. 個人伝道.
パウロは,「私は,ギリシヤ人にも未開人にも,知識のある人にも知識のない人に も,返さなければならない負債を負っています」(ローマ1:14)と言っている.すべてのキ リスト者は伝道すべきであり,伝道が特定の人の任務と考えてはならない.
大衆伝道,放送伝道のような形をとっても,最終的には,個人的接触による信仰指導 が不可欠である.そのためには,聖書的訓練を実地に積み重ね,相手の心の要求を知 り,相手の言うことをよく聞き,聖霊によって,福音の本質を適切に語り,キリストに まで導くことを学ばなければならない.教会教育の強化により信徒の弟子化が図られ, 信徒の伝道への派遣がさらに活発になされることが期待される.
5. 大衆伝道.
キリスト教宣教史を顧みると,歴史の曲り角には,常に盛んな大衆伝道が行われてき たのを発見する.神は摂理的に有力な伝道者を起し,聖霊によって福音をわかりやすく 宣べ伝え,多数の人々を集め,悔い改めに導かれるのである.このためには,一つでも 多くの聖書信仰に立つ教会の協力が必要である.
6. 訪問伝道.
これは新約聖書的伝道法である.主イエス御自身を,天よりこの地上に來られた訪問 伝道者と見ることもできる.またイエスは,弟子たちの中から12人,後に72人を選び, 彼らを訓練し,2人ずつの組にして,御自分の代表として派遣された(ルカ10章).
パウロも積極的に訪問伝道を展開し,大きな効果を挙げ,わずかな年月の間にアジヤ 各地に教会を生み出して,福音を満たしたのである.訪問伝道のためには,これに従事 する信徒の生活設計の立て直しが必要であり,訪問すべき地域,人々を特定し,牧師と のチームワークによって進めるべきである.この訪問伝道によって,新しい求道者を発 見し,適切に導き,また,不活動会員の信仰回复を図り,宣教と教会成長が活性化され るのである.
7. 病床伝道.
主イエスの在世中,いつもみもとに多くの病人がいやしを願って集まった.また,主 は病人を訪ね,いやされた.病人の肉体的苦痛,精神的不安,未來に対する絶望をキリ ストによって慰め,祈り,信仰によるいやしを与えることは大きな祝福である.病床 は,人々をわがままにもする.この自分の限界を知る時こそ,伝道の好機である.
8. 刑務所伝道.
特に刑務所伝道は,最も忍耐と犠牲を必要とする伝道の一つと言える.聖書や良書, トラクトの差入れはぜひ必要であり,通信による伝道も非常に効果がある.一つの大き な問題は,刑余者のための保護事業の必要である.刑余者が社会に出ても,社会が冷た く,また適切な職業がないままに,再び悪の道を歩く者が多いからである.彼らのため の宿泊及び授産所,職業紹介などを行いつつ,彼らを保護し,伝道する施設が多く造ら れなければならない.
9. 放送伝道.
マスコミ伝道は,民衆の生活に深く,広く,入っていくだろう.確かに放送伝道は, 教会の設置されていない地域や離島,病院や刑務所にも福音を携えていくものである. その範囲は全世界的と言える.さらに,放送伝道の利点は,その頻度にある.何度も繰 り返して伝えられる.その効果は強大である.そして,その速度である.他の方法では とうてい及ばない速さで福音を届けるのである.われわれは,健全な福音放送のために 祈り,経済的に援助することによって放送伝道に間接的に參加することができる.ま た,あかし,説教,音樂,集会案内などで直接參加することもできる.テレビ․ラジオ 牧師による地域特別集会などを開き,視聴者との触れ合いを持つことによって,効果を 挙げることができる.
10. 映画․演劇伝道.
サタン的な要素を持った映画․演劇が多い中で,科学的宗教映画,聖書的伝道映画, キリストの生涯を描いたものや『十誡』などが伝道の武器として大いに用いられてい る.演劇伝道も,タイなどでは盛んで庶民に親しまれている.ヨーロッパでは,ドイツ のバイエルンのオーベルアマルガウのキリスト受難劇がある.日本の教会でも,今後多 くの劇団が組織され,間接的に直接的に用いられることが期待される.
11. 路傍伝道.
この伝道は,キリスト教独特の伝道法というわけではないが,主イエス御自身,また 弟子たちが用いた方法であり,日本でも今なお用いられている.教会に來ない不特定 多数の人々に,こちらから出かけて行って積極的に福音を説くのが路傍伝道である. ジョン․ウェスリやウィリアム․ブースなどは,しばしば路傍伝道で,数千人,時に は1万人もの群衆を集めたと伝えられている.今日でも,さらに研究し,新しい方法も 取り入れて大いに活動すべきである.
12. 天幕伝道.
この伝道は路傍伝道と同様,普通教会に足を運ばない人々に,こちらから近付いて行 く伝道である.手軽にできて経済的であり,信徒を伝道に巻き込んで奉仕の喜びを与 えることができる.時期を選び,適当な場所で,良いチームと良い説教者が必要であ る.
13. 開拓伝道.
日本の未伝地は,2千町村に上っている.主イエスも一箇所にしばらくとどまって福 音を宣べ伝え,そしてまた次の新しい伝道地に移られた.こうして少なくとも3年間に ガリラヤ地方を3回巡回し,その間にたびたびユダヤ及びペレヤを巡回している.パウ ロは,当時の代表的な都市に積極的な開拓伝道を展開し,見事な教会形成と成長を実 現し,当時の文字通り世界に福音を満たしたのである.日本でも国内開拓伝道の団体 があり,福音の処女地に開拓する伝道者や群れを支援し,3年以内に自給する教会形成 を目指して成功を収めている.日本の福音化のためには,積極的な開拓伝道によって 未伝地をなくしていくことが必要である