キリスト者とは何か
- 使11:26 -
「... このアンティオキアで、弟子たちが初めてキリスト者と呼ばれるようになった のである。」
「キリスト者とは,キリストにより,神の選びにより,聖霊と信仰によって神の子とされた人のことである.」(ジャン․カルヴァン)
1. キリスト者の称号の由來と意味
⑴ キリスト者の称号の由來
① キリストに属する者,キリストにつく者,キリスト党,キリストに従う者の意味である。
② キリスト者という語は新約中3回用いられている(使11:26,26:28,Ⅰペテ4:16).
- この呼び名が弟子たち自身によって考えられたのか,アンテオケの異教徒によってつけられたのか明らかでない.しかし,最初は侮蔑的な意図を含んでいたようで ある.2世紀になると教会は,「キリスト者」ということばを誇りを持って使うよう になった.
⑵ キリスト者の称号の意味
① 初代教会の信徒たちはこのことばを使わず,初めの頃は,互いを「兄弟」(使1:16,ローマ1:13)と呼んでいた.そのほかに,「信者」(使2:44),「この道の者」(9:),「弟子」 (6:1),「聖徒」(9:13)などの呼称が使われていた.
② 彼らが初めてキリスト者と呼ばれるようになったのは40/44年頃のアンテオケにおいてである.(使11:26),アンテオケの信者たちがいつもキリストについて語ってい たことから付けられたあだ名だと言われている.
③ この呼び名自体に軽蔑的な響きが込められていたとは思われない.だが,新約聖書にこの語がわずかに3回しか登場しないということは,初代キリスト者には自らを 「キリスト者」と称する習慣がほとんどなかったことを物語っている.
2.キリスト者の像
新約聖書が描くキリスト者の像を簡潔に記すなら,次のようなものである.
⑴ 創造主なる神を信じ,御子キリストを信じ(ヨハネ14:1),聖霊に導かれて生きる者である(ガラテ5:25).
⑵ 救い主を受け入れて神の子供とされた(ヨハネ1:12).
⑶ キリストの内にあり(Ⅱコリン5:17),キリストはキリスト者の内にいる(ガラテ2:20).
⑷ 生きるにしても死ぬにしてもキリストのものである(ローマ14:8).
⑸ 赦された罪人である(Ⅰテモテ1:15).
⑹ 救われたのはキリストの贖罪のゆえ,神の恩寵のゆえであり(ローマ3:21ー24),彼は信仰によって義とさ(ガラテ2:16),キリストによる神との平和を持っている(ローマ5:1).
⑺ 新しく造られた者であり(Ⅱコリン5:17),古い人を脱ぎ捨てて(コロサ3:9),キリストを着たのである(ガラテ3:2),聖化を追い求め(ヘブラ12:14),キリストに似た者とされること を祈り求める(Ⅰヨハネ3:2).
⑻ 神を礼拝し(ヨハネ4:24),祈り(ローマ12:12),賛美し(ヘブラ3:15),信仰と希望と愛に生きる(Ⅰコリン13:13).
⑼ キリストのからだなる教会の一員として(ローマ12:1),他のキリスト者たちとともに礼拝し,祈り,互いに交わる(使2:42).
⑽ 互いに愛し合い(ヨハネ13:14),互いの重荷を負い合い(ガラテ6:2),賜物を用いて奉仕し(ローマ12:3ー8),キリストのからだなる教会を建て上げる(エペソ4:16).
⑾ 自らの内においては御霊の実を結ぶことを祈り求め(ガラテ5:22、23),この世に対して
は地の塩,世の光として生きる(マタイ5:13,14),主イエスの証人となって(使13:31), 福音を宣べ伝える(マルコ16:15).
⑿ 彼にとって地上の人生は天の故郷を目指して歩む旅であり(ヘブラ11:13),その国籍は⒀ 天にある(ピリピ3:20),主の再臨を待ち望みつつ(Ⅰコリン16:22),神を愛し,人を愛して生きていく(マルコ12:30,31).
⒁ キリスト者の信仰と生活の規範は神のことばなる聖書である(Ⅱテモテ3:16,17).
「キリスト者とは,厳密な意味において,それは真実なキリストにある救いの信仰を持っている者に適用されるべきであるが,ただ神御自身のみが真の信者は誰であるかということに関する確実な認識を持っているのである」(S・A・カートレッジ)