キリストによる贖罪
- ローマ3:24,25 -
「ただキリスト․イエスによる贖いの業を通して、神の恵みにより無償で義とされる のです。神はこのキリストを立て、その血によって信じる者のために罪を償う供え物と なさいました。それは、今まで人が犯した罪を見逃して、神の義をお示しになるためで す。
贖罪は,神が,祭司としてのキリストによって,私たちの罪からの贖いのためになし たもう事業である.私たちの救いは,神が,私たちのために,キリストにおいてなした もうた働きに全く依存している.こでは,贖罪の動機,贖罪の必要性,贖罪の性質,贖 罪の範囲を取上げる.
1.贖罪の動機
⑴ イザヤ53:10のみことばは,贖罪の動機をよく表現している.
「しかし,彼を砕いて,痛めることは主のみこころであった.もし彼が,自分のいのちを罪過のためのいけにえとするなら,彼は末長く,子孫を見ることができ,主のみ こころは彼によって成し遂げられる」
⑵ 同じ思想は,より濃縮された表現で,エペソ1:5ー7で述べられている.
⑶ 贖罪の動機は,全く神の一方的好意によるものである.(ヨハネ3:16,ローマ3:24,25)
2.贖罪の必要性
⑴ 贖罪の必要を否定する者は,いつの時代にも教会の中に存在した.
- 教会教父のイレナエウスは,贖罪の絶対的必要を強調した.
⑵ 神の聖なる律法の不変性は,罪を犯した罪人の償いを求める.(民23:19)
⑶ 神の真実は,神が罪に対して宣告されたさばきの遂行を求められる.(エゼキ18:4)
-「罪から來る報酬は死です」.(ローマ6:23)
- この罪の価は,まず神に対して支払われ,神の義が満たされ,神の怒りが和らげら れなければならないのである.
3.贖罪の性質
⑴ 贖罪の必要性から示されたように,贖罪は何より神に対するものとして,神中心に考えられなければならない.(Ⅱコリン5:21)
⑵ 贖罪が,神に対する和解を成り立たせるものであるから,私たち罪人に対する神の和解が成立するのである.
⑶ 贖罪の性格は,何より神中心であり,客観的なものなのである.
- キリストは,客観的にも,主観的にも,罪を知ることのないお方として,御自分の罪のためにいけにえをささげ,償いをする必要は全くなかった.
- キリストが,神․人であり,罪なき人間性をお持ちになっておられる方であるからこそ,代替性による贖罪は成立したのである.
- キリストは,律法の要求を完全に満たすことによって,贖罪を完全なものとされたのである.
⑷ キリストの贖罪の代替性について以下の聖句を參照されたい.
- イザヤ53:6,マルコ10:45,ヨハネ1:29,ローマ8:3,Ⅱコリン5:21,ガラテ1:4,3:13,ヘブラ9:28,Ⅰペテロ2:24,3:18,Ⅰヨハネ2:2
4.贖罪の範囲
⑴ キリストがすべての者のために死なれたという聖句が見られる.
- 代表的なものとして,Ⅰテモテ2:6,テトス2:11,ヘブラ2:9を挙げることができよう.
「この方はすべての人の贖いとして御自身を献げられました。これは定められた時に なされた証しです。(Ⅰテモテ2:6)
⑵ キリストが,御自分の羊のために,教会のために,選民のために死なれたことも繰り返し語られている.(マタイ1:21,ヨハネ10:11,15,使20:28,エペソ5:25ー27,ローマ8:32ー35)
「マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪か ら救うからである。」(マタイ1:21)
⑶ 聖書の統一性を信じる立場から言えば,「すべての者のために」という表現を限定的に解釈するのが妥当であろう.
- その場合,世のすべての国,民族のために,あるいは,国民のあらゆる階層の者という意味で「すべて」と言われていると解される.