初代教会において教師
- Ⅰコリン12:28 -
「神は、教会の中にいろいろな人をお立てになりました。第一に使徒、第二に預言者、第三に教師、次に奇跡を行う者、その次に病気をいやす賜物を持つ者、援助する者、管理する者、異言を語る者などです。」(Ⅰコリン12:28)
Ⅰ.「教師」という語の意味
⑴ 教師(διδάσκαλοςディダスカロス)は,先生(マスター)と一般には訳されており,尊敬を表す語である.
⑵ 新約聖書においてこの語は60回ほど使われているが,半数以上は主イエスを指している.
⑶ 一般の教師(マタイ10:24,ルカ6:40)などにも見られるが,律法が示す神の道を教える人を意味している.
2.教会の中で教師の役割
⑴ 新約聖書では,バプテスマのヨハネ(ルカ3:12)や,ユダヤ人の宗教指導者,権威者に用いられている(ルカ2:46,ヨハネ3:10).
-「三日の後、イエスが神殿の境内で学者たちの真ん中に座り、話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。」(ルカ2:46)
-「イエスは答えて言われた。「あなたはイスラエルの教師でありながら、こんなことが分からないのか。」(ヨハネ3:10)
⑵ ヨハネ1:38に見られるように,弟子との関連において,教えを説く「師」を指す場合も
あるし,公的な立場ではなくても,一つの群の指導者の地位が認められている場合にも用いられている.
-「イエスは振り返り、彼らが従って來るのを見て、「何を求めているのか」と言われた。彼らが、「ラビ『先生』という意味どこに泊まっておられるのですか」と 言うと、」(ヨハネ1:38)
⑶ 初代教会の中で「教師」は,使徒,預言者と共に重要な役割を果していた(使13:1,Ⅰコリン12:28).
-「アンティオキアでは、そこの教会にバルナバ、ニゲルと呼ばれるシメオン、キレネ人のルキオ、領主ヘロデと一緒に育ったマナエン、サウロなど、預言する者や教師 たちがいた。」(使13:1)
⑷ 教師は地域的な職務として,牧師(エペソ4:11)や長老(Ⅰテモテ5:17),監督(テトス1:9)をも兼ねるものとなっていったことは事実である.しかし,この教える職務には,地域に限定されない使徒的な要素もあった.
⑸ 使徒職との相違を挙げれば,教える職務は宣教的な面よりも教育的な面が中心であったと考えられる. 使徒パウロは、教師という特別な働きの場にあったことを述べているし(Ⅰコリン14:26),彼自身,自分を教師と見なしている(Ⅰテモテ2:7,Ⅱテモテ 1:11).
-「兄弟たち、それではどうすればよいだろうか。あなたがたは集まったとき、それぞれ詩編の歌をうたい、教え、啓示を語り、異言を語り、それを解釈するのですが、すべてはあなたがたを造り上げるためにすべきです。」(Ⅰコリン14:26)
-「わたしは、その証しのために宣教者また使徒として、すなわち異邦人に信仰と真理を説く教師として任命されたのです。わたしは真実を語っており、偽りは言ってい ません。」(Ⅰテモテ2:7)
-「この福音のために、わたしは宣教者、使徒、教師に任命されました。」(Ⅱテモテ1:11)
⑹ 預言者がより自由な形で勧めをしていたのに比べて,教師はその形式と内容において規則性が求められていたのであろう(參照Ⅰテモテ2:7).
-「わたしは、その証しのために宣教者また使徒として、すなわち異邦人に信仰と真理を説く教師として任命されたのです。わたしは真実を語っており、偽りは言ってい ません。」(Ⅰテモテ2:7)
⑺ 使徒たちが世を去り,異端的な教えが広がるにつれて,教師の働きは,地域に定着することが必要となっていったものと考えられる(參照Ⅱテモテ2:2).
-「そして、多くの証人の面前でわたしから聞いたことを、ほかの人々にも教えることのできる忠実な人たちにゆだねなさい。」(Ⅱテモテ2:2)