仲保者としてのイエス․キリスト
Ⅰテモテ2:5
「神は唯一であり、神と人との間の仲介者も、人であるキリスト․イエスただおひとりなのです.」(Ⅰテモテ2:5)
人間は,神によって創造された時,この被造世界に対して,預言者,祭司,王としての職務を果す者として用いられるために,神のかたちに従って創造され,知識と義と聖とを与えられたのである.
人間は堕落によって,その職務を遂行する能力を喪失した.人間を本來の職務に回復するために,また,人間が人間としての本來の光栄と特権を回复するために,キリストは,預言者,祭司,王としての働きを全うされるのである.
1. 預言者の職務
⑴ すでに旧約聖書に,大預言者としてキリストの出現が預言されている.
「あなたの神,主は,あなたのうちから,あなたの同胞の中から,私のようなひとりの預言者をあなたのために起こされる.彼に聞き従わなければならない」(申18:15)
⑵ イエス御自身,自らを預言者と語っておられる.(ルカ13:33)
- 預言者にふさわしく,権威ある者として語られた(マタイ7:29).人々が,イエスを預
言者と認めたことは当然のことであった(同21:11,46).
⑶ キリストは,その地上生涯を通して,預言者として語られただけでなく,天に上
げられたもうた後も,使徒たちの宣教と,聖霊の働きを通して預言者としての働きを続けられた(ヨハネ14:26,16:1214,使1:8).
⑷ 現在も,みことばの宣教とともに働く聖霊をもってその職務を続けておられる.
「あなたがたに耳を傾ける者は,わたしに耳を傾ける者である」(ルカ10:16)
2. 祭司の職務
⑴ 旧約聖書は,來るべき救い主が,祭司であることを預言している。
「主は誓い,そしてみこころを変えない.『あなたは,メルキゼデクの例にならい,とこしえに祭司である.』」(詩110:4)
⑵ 新約聖書では,ヘブル人への手紙の中で,キリストの祭司職が詳細に論じられている(3:1,4:14,5:5,6:20,7:26,8:1).
⑶ 祭司は,人間を代表するために,人間の中から選ばれ,神によって任命され,民の罪のためにいけにえをささげ,人々のためにとりなしをする者である(ヘブラ5:1ー4).
⑷ 祭司としてキリストは,御自身をいけにえとしてささげられた(同5:5ー10).さらに祭司としてとりなして下さる(同9:23,24).
- 御自分がいけにえであり,同時に,いけにえをささげる祭司であり,とりなしを続ける祭司であるということは,私たちの救いが全くキリストの側の働きによって備えられるものであることを示している.救いは全く神の恩恵によるのである.
3. 王の職務
⑴ キリストの王としての職務,彼の王権についても,旧約聖書の中で多く語られている(詩2:6,132:11,イザヤ9:6,7,ミカ5:2,ゼカリ6:13).
⑵ キリスト御自身,ピラトの「それでは,あなたは王なのですか」との問に対して,「わたしが王であることは,あなたが言うとおりです」と答えられた(ヨハネ18:37).
⑶ キリストは,昇天の前に,弟子たちに,「わたしには天においても,地においても,いっさいの権威が与えられています」と語られた(マタイ28:18).
- それは,イエスの再臨において完成するものであり,終末的希望をもって待ち望むべきものである(ルカ22:29,Ⅰコリン15:50,Ⅱペトロ1:11).
⑷ キリストの王権は,信徒,教会に限られるものではなく,世界に,そして,宇宙に及ぶものである.教会は,今の世にあって,試練の中に置かれる.
- キリストは,勝利の王として,御自分の民を守られる(Ⅰコリン15:2428).
⑸ キリストは,弟子たちに,「あなたがたは,世にあっては患難があります.しかし,勇敢でありなさい.わたしはすでに世に勝ったのです」(ヨハネ16:33)と言われた.
パウロは,イエス․キリストこそ,神と人間との間の唯一の仲保者であると宣言して いるが(テモテ2:5),キリストの仲保者としての働きは,預言者,祭司,王という3つの職 務を含んでいる.