悪霊に対するイエスの力と権威
- ルカ8:2639 -
「イエスが陸に上がられると、この町の者で、悪霊に取りつかれている男がやって來た。この男は長い間、衣服を身に着けず、家に住まないで墓場を住まいとしていた。イエスを見ると、わめきながらひれ伏し、大声で言った。「いと高き神の子イエス、かまわないでくれ。頼むから苦しめないでほしい。」」(ルカ8:2728)
ルカによる福音書8:22-56には、自然界(22-25)、悪霊(26-39)、病気(40-48)、そして死の世界(49-56)に対するメシヤとしてのイエスの力(46)と権威が描かれる.
このようなイエスの力と権威は、「いったいこの方はどういう方なのだろう」(25) という隠されたメシヤ(56)の正体のなぞに対する解答である.
悪霊すらも〈いと高き神の子,イエスさま>と告白し従うイエスの姿を描く.
1.湖の向う岸はゲラサ人の地、異教徒の世界
- そこは,汚れた霊に取りつかれた者が行く手をふさぎ,山腹には豚が飼われている異教世界である。<参照; マルコ5:120>
2.汚れた霊につかれた男のあわれな状況
⑴ 暴虐的で危険な存在でありながら,誰も彼を拘束することが出來ない.
-「この人は何回も汚れた霊に取りつかれたので、鎖でつながれ、足枷をはめられて監視されていたが、それを引きちぎっては、悪霊によって荒れ野へと駆り立てられていた。」(ルカ8:29)
① 悪霊は人に働きかけ,人の中に入り込んで,精神的に,あるいは肉体的に病的な状態をもたらす.
② この意味不明の恐怖心は(マルコ9:1418),病気の人を汚れたもの,あるいは危険なもの,それゆえに社会的には無用なものであり,脱落者として人間社会から排除する力となる.
⑵ 悪霊は人間よりはるかに強い力を持っている.
① その目的は,真の人間性の歪曲,破壊にある.
② 悪霊につかれた男は墓場に住み,夜昼となく奇声を上げ,自分の身体を傷つけていた.
<参考; 悪霊はレギオン, 古代ローマの4千から6千の軍隊を意味する>
⑶ 汚れた霊は,すぐにイエスが神の子であることを見抜き,自らを守ろうとして,自分を避けて通ってくれと訴える. <參照 マルコ1:24>
「ナザレのイエス、かまわないでくれ。我々を滅ぼしに來たのか。正体は分かっている。神の聖者だ。」(マルコ1:24)
① レギオンは,自分たちをこの地方から追い出さないで,豚の群れに乗り移らせてほしいとイエスに願った.
② 主はそれを許可された.汚れた霊が乗り移った豚は,狂ったように崖を駆け降り,湖へなだれ落ちて死んだ.
3.この男は暗黒の支配者から解放された.
⑴ イエスは〈汚れた霊よ.この人から出て行け〉と命じられた.
① イエスは,しばしば悪霊を追い出し,弟子たちにも悪霊を追い出す権威を授けて,人々を救いに導かれた. (マタイ8:2834,10:1,12:22,15:2228等)
② イエスの悪霊追放のわざは,このような人間社会から排除されていた人たちを,社会復帰させるといういやしを与えるものである.
⑵ みわざの結果は(ルカ8:35)に見ることが出來る.
「人々はその出來事を見ようとしてやって來た。彼らはイエスのところに來ると、悪霊どもを追い出してもらった人が、服を着、正気になってイエスの足もとに座っているのを見て、恐ろしくなった。(ルカ8:35)