生ける神のしもべ
ダニエル書 6:19-23
19. 王は夜明けに日が輝き出すとすぐ、獅子の穴へ急いで行った。20. その穴に近づくと、王は悲痛な声でダニエルに呼びかけ、ダニエルに言った。「生ける神のしもべダニエル。あなたがいつも仕えている神は、あなたを獅子から救うことができたか。」
21. すると、ダニエルは王に答えた。「王さま。永遠に生きられますように。22. 私の神は御使いを送り、獅子の口をふさいでくださったので、獅子は私に何の害も加えませんでした。それは私に罪のないことが神の前に認められたからです。王よ。私はあなたにも、何も悪いことをしていません。」
23. そこで王は非常に喜び、ダニエルをその穴から出せと命じた。ダニエルは穴から出されたが、彼に何の傷も認められなかった。彼が神に信頼していたからである。
序言.
「生ける神のしもべダニエル。あなたがいつも仕えている神は、あなたを獅子から救うことができたか。」 (ダニエル書 6:20)
+ダニエル(Daniel): BC605年、ユダの王エホヤキムの時、第1次バビロンの捕虜として連れて行かれたユダヤ人で、王族や貴族たっだ(1:3、6)。= バビロンを征服したダリヨスはダニエルを大臣に任命された(6:1-2)。- 6章でのダニエルの推定年齢が80歳ほどです。この出来事の以後、翌年に一次捕虜帰還が行われる。 - ダニエルをねたんだ他の大臣や太守たちが、ダリヨス王に王以外の神に仕えないようにという禁令の文書に署名するように要請した(6:3-9)。ダニエルは屈することなく神に祈り、結局このことによって獅子の穴に投げ込まれた(6:10-18)。しかし神の保護で生き返り、むしろダニエルを訴えた者たちは、彼らの妻子たちとともに獅子の穴に投げ込まれた(6:19-27)。
本文講解.
1. 法令にあえて従わなかったダニエル (ダニエル書 6:10-15)
+ メディヤ・ペルシヤの法制度は、ひとたび法令を発するならば、たとい王といえどもそれに従わなければならない立憲国家でした。= 法が制定されたならば、王といえどもそれを勝手に変更したり、取り消したりすることはできませんでした。ダニエルは法制度と関係なく、神の法の下に生きることを選び取った人物です。そのために、ダニエルは他の高官の策略にはめられ、獅子の穴の中に投げ入れられてしまいました。
+ ダリヨス王は国を治めるために、120人の「太守」(総督、知事)を任命し、その上に三人の「大臣」(総監)を置きまた。= その「大臣」の一人がダニエルでした。ダニエルはいわばユダヤ人で捕虜として連れて来られたよそ者です。しかも彼は、他の同僚よりも「きわだってすぐれていた」ために、王はダニエルに国全体を治めされる責任を与えようとしました。そのために、ダニエルは同僚たちから妬みを買ってしまったのです。「太守と大臣たち」は国政についてダニエルを訴える口実を見つけようとしましたが、何の口実も欠点も見つけることができなかったため、巧みな策略によってダニエルを陥れようと謀ったのです。
+ ダニエルは同僚の策略を知りながらも、自分の家に帰って、いつものように、日に三度、神に祈ることをやめませんでした。= そのことが禁令にふれることになったのです。ダニエルを信頼するダリヨス王は、非常に憂い、なんとかダニエルを救おうとしましたが、王が制定し、自ら署名した禁令を変更することは許されませんでした。そのためにダニエルは獅子の穴に投げ込まれてしまったのです。
+ 使徒パウロも愛弟子のテモテに対して述べています。
[Ⅱテモテ3:11~12] 何というひどい迫害に私は耐えて来たことでしょう。しかし、主はいっさいのことから私を救い出してくださいました。確かに、キリスト・イエスにあって敬虔に生きようと願う者はみな、迫害を受けます。
2. 獅子の穴の中で守られたダニエル (ダニエル書 6:16-18)
+ 普通ならば、獅子の穴の中に入れらるやいなや、すぐに食い殺されていたに違いありませんが、ダニエルはその身になんの害をも受けることなく、全く無傷でした。なぜなら神が御使いを送って獅子の口を閉ざされたからです。
+ 「獅子」は、信仰者に対する悪魔による迫害の象徴です。しかし使徒ペテロは苦難の中に置かれている者たちに対して励ましています。
[Ⅰペテロ5章8~10節] 8. 身を慎み、目をさましていなさい。あなたがたの敵である悪魔が、ほえたける獅子のように、食い尽くすべきものを捜し求めながら、歩き回っています。9. 堅く信仰に立って、この悪魔に立ち向かいなさい。ご承知のように、世にあるあなたがたの兄弟である人々は同じ苦しみを通って来たのです。10. あらゆる恵みに満ちた神、すなわち、あなたがたをキリストにあってその永遠の栄光の中に招き入れてくださった神ご自身が、あなたがたをしばらくの苦しみのあとで完全にし、堅く立たせ、強くし、不動の者としてくださいます。
+ ダニエルは獅子の穴の中で、これまで以上に、確かな神の臨在を経験したに違いありません。ダニエル書の6章の意義は、迫害という苦難において必ずや神の介入があるということを示すだけでなく、同時に、神の民を苦しめる敵は必ず自滅するという真理を示すためであったと言えます。事実、ダニエルを陥れようとした者たちは、その妻子と共に、獅子の穴の中に投げ入れられてしまったからです。
3. ダレイオス王の命令、証言 (ダニエル書 6:25-27)
+ ダリヨス王は全土に住むすべての諸民、諸国、諸国語の者たちに次のように書き送った.
[ダニエル書 6:25-27] 25. そのとき、ダリヨス王は、全土に住むすべての諸民、諸国、諸国語の者たちに次のように書き送った。「あなたがたに平安が豊かにあるように。26. 私は命令する。私の支配する国においてはどこででも、ダニエルの神の前に震え、おののけ。この方こそ生ける神。永遠に堅く立つ方。その国は滅びることなく、その主権はいつまでも続く。27. この方は人を救って解放し、天においても、地においてもしるしと奇蹟を行ない、獅子の力からダニエルを救い出された。」
結言.
(1) ダニエルは、他の大臣や太守よりも、きわだってすぐれていた。しかしダニエルは同僚たちの嫉妬と計略によって獅子の穴に投げ込まれ、死人のようになった。
(2) 神はダニエルを獅子の穴から救ってくださった。直ちに、王は命令を出して、ダニエルの神を崇めるように証言した。結局、そのすべての出来事は神に大きな栄光になった。
[マタイ5:10~12] イエスご自身は「義のために迫害されている者は幸いです。天の御国はその人たちのものだから。わたしのために人々があなたがたをののしり、迫害し、ありもしないことで悪口を浴びせるとき、あなたがたは幸いです。喜びなさい。喜びおどりなさい。天ではあなたがたの報いは大きいから。あなたがたより前にいた預言者たちを、人々はそのように迫害したのです。」と言われました。