<近代のキリスト教文学>


 ヨーロッパのキリスト教文学は、ヒューマニズム、宗教改革を経て、16世紀以降急速に世俗化の傾向を辿りました。 この中で、すぐれて宗教的な作品といわれるのが、ミルトンの叙事詩「失楽園」です。「創世記」に取材し、人間の自由意志を中心テーマとする作品で、イギリスのキリスト教文学界に金字塔を立てたといわれます。


 フランスではパスカルが「パンセ」によって神との対決のなかに、絶対的真理を求める人間の苦悩を浮き彫りにし、その影響は現代にまで及んでいます。


 自己の魂の救いを求めるのに、カトリックでは教会を中心に集団的慣習の中に身を置くのに対して、プロテスタントでは個の自覚において自己を厳しく律していくという点に相違があり、プロテスタントの典型的文学として、誘惑に負けずに孤独な旅をするバニヤンの「天路歴程」の主人公クリスチャンの姿があります。

理性の時代といわれる18世紀から、急速に産業革命が進む19世紀にけては、ワーズワースの詩に見られるような汎神論的傾向が強 まりました。 また唯物論、種の起源に関する新たな問題提起によって懐疑主義、無 神論が台頭しました。しかしこの精神的不毛の状況のなかにあって究 極的実在を希求し、神とわれ、われとあなたという根源的な関係を不 条理の現実の中に、いかに模索していくか、善・悪・罪・救済とはなにか と根源まで追求していくのが支配的テーマとなりました。 ロシアのドストエフスキー、ドイツのリルケ、ベル、フランスのモー リヤック、ベルナノス、カミユ、イギリスのT.S.エリオット、チェス タートン、G.グリーン、ウォー、アメリカのディキソン、メルビル、近 代ギリシアのカザンザキスらの作家、詩人によりこれらのテーマが多 様に追求されました。

 

http://www.ne.jp/asahi/koiwa/hakkei/kirisitokyou26.html