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概要
神典とは「仏典」に対して考えられた用語であり、中世に神道の教典(経典・聖典)として想定された。現在の神道には、キリスト教の聖書、イスラム教のコーランにあたるような公式に定められた「正典」は存在しないとされるが、正統な信仰の規範とすることができると広く認められる一群の文献が存在し、これら神道における聖典を神典と総称している。
神典と呼ばれる文献は主として平安時代までに成立したもので、神代における神々の事績を記すとともに、その内容において仏教や儒教の影響が少ないものに限られている。また神道五部書はまれに神典にいれられている例があるが、このような中近世の諸流神道家による著作は各流派における教義を示したもので客観性に欠けるために、通常は神典の範囲からは外されるのが普通である。
なお、契沖はこれらの文献を「神代ヨリ有ツル事ドモ記セルノミ」に過ぎないので、神道の根本を知るためには朝廷における公式行事(特に祭祀)や諸神社における祭祀に注目すべきであると説いた。