キリスト者の十字架
マタイ16:21 -
「このときから、イエスは、御自分が必ずエルサレムに行って、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受けて殺され、三日目に复活することになっている、と弟子たちに打ち明け始められた。」(マタイ16:21)
イエスは御自分の死について弟子たちに最初に語られた時,彼らも「自分の十字架を負い,そしてわたしについて來る」ようにと命じられた.(マタイ16:21,24)
当時,十字架刑はしばしば行われ,人々は十字架を自分で負って刑場へ向かう死刑 囚を目にする機会も多かった.それゆえこのイエスのおことばは,まず第1に字義通り のものとして受け取るべきであろう.
1.十字架についてのイエスの教え
⑴ 十字架の必要性をイエスは前もって教えられた。(マタイ16:21,マルコ8:31,ルカ9:22)
⑵ イエスに従う者たちが師と同じ手段で殺されることが予告されており,この預言は教会の歴史の初期において,またその後にも,文字通り成就したのであった.(マタイ23:34)
「わたしは預言者、知者、学者をあなたたちに遣わすが、あなたたちはその中のある者を殺し、十字架につけ、ある者を会堂で鞭打ち、町から町へと追い回して迫害する。」(マタイ23:34)
⑶ キリストに従う者たちの,主イエスに対する忠誠と献身,絶えざる自己否定の生き方を意味している.(ルカ9:23)
「イエスは皆に言われた。わたしについて來たい者は、自分を捨て、日々、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい。」(ルカ9:23)
2.十字架に対する弟子たちの理解
⑴ 弟子たち:
① 神の御計画の中で十字架のつまずきが,どんな意味と必要性を持っていたかを高らかに宣言している。(使2:23,36,4:10,ガラテ5:24,エペソ2:16,コロサ1:20)
「このイエスを神は、お定めになった計画により、あらかじめご存じのうえで、あなたがたに引き渡されたのですが、あなたがたは律法を知らない者たちの手を借りて、十字架につけて殺してしまったのです。」(使2:23)
⑵ パウロ:
① 聖書に示された十字架の意味を確実にする。(Ⅰコリン15:3)
「最も大切なこととしてわたしがあなたがたに伝えたのは、…すなわち、キリストが、聖書に書いてあるとおりわたしたちの罪のために死んだこと、」(Ⅰコリン15:3)
② 十字架のうちにこそ真の知恵があるので,十字架につけられたキリスト以外は何も知るまいと決心する。(Ⅰコリン2:2)
「わたしはあなたがたの間で、イエス․キリスト、それも十字架につけられたキリスト以外、何も知るまいと心に決めていたからです。」(Ⅰコリン2:2)
③ 十字架以外は誇らないと宣言する。(ガラテ6:14)
「このわたしには、わたしたちの主イエス․キリストの十字架のほかに、誇るものが決してあってはなりません。…」(ガラテ6:14)
⑶ ヨハネ:
① 十字架そのものにイエスの勝利を見て,イエスが最期に「完了した」と語られたことを証言している。(ヨハネ19:28ー30)
- 贖いの道具として使われた十字架は,死,苦しみ,血などの語と共に救いの希望を暗示する重要なことばとなった.
3.キリスト者の十字架
⑴ 十字架はまた,キリスト者が主イエスのために忍ばなければならない恥と,へりくだりの象徴でもある.(ヘブラ12:2)
⑵ キリスト者の「古い人」は,「キリストとともに十字架につけられ」ている.(ローマ6:6,ガラテ2:20)
⑶ キリストとともに,新しい复活のいのちにあずかる者とされるためである.(ローマ6:4)
⑷ キリスト者は,主イエスの十字架をこそ誇りとするのである.(ガラテ6:14)
⑸ 十字架は,キリスト教の宣教の使信を要約するものとなった.(参照:Ⅰコリン2:2)
- 世々の教会は,十字架のしるしを,キリスト者の信仰の象徴として,高く掲げ続けてきたのである.