賛美の力

詩篇40:1-3

40:1 私は切なる思いで主を待ち望んだ。主は、私のほうに身を傾け、私の叫びをお聞きになり、
40:2 私を滅びの穴から、泥沼から、引き上げてくださった。そして私の足を巌の上に置き、私の歩みを確かにされた。
40:3 主は、私の口に、新しい歌、われらの神への賛美を授けられた。多くの者は見、そして恐れ、主に信頼しよう。

 一、賛美の力


 使徒パウロとシラスがピリピの町でキリストを宣べ伝えたとき、鞭打たれ、牢屋に閉じこめられました。ふたりは牢屋の中でも賛美の歌を歌っていました。パウロとシラスは鞭で打たれたばかりでなく、牢屋で足かせをかけられましたから、その痛み、苦しみはたいへんなものだったと思ます。しかし、ふたりは賛美を歌うことによって、苦痛から救われました。賛美には私たちの心の痛みばかりでなく、からだの痛みをもとりのぞく力があります。


 ふたりが賛美を歌っていると、大きな地震が起こり、牢屋の扉という扉がみな開き、囚人たちをつなぎとめておいた鎖も解けました。神がご自分の使徒であるパウロとシラスを牢屋から解放するために、特別な奇蹟を起こされたのです。賛美には神の奇跡を呼び起こす力があるのです。


 これを見た牢番は、囚人が皆逃げたかと思い、責任をとって自害しようとしました。しかし、牢屋の扉が開き、鎖が解けても、囚人はだれひとり逃げ出してはいませんでした。パウロとシラスが賛美を歌っていたとき、「ほかの囚人たちも聞き入っていた」(使徒16:25)と聖書は書いていますが、囚人たちが聞き入っていた賛美が彼らを逃亡させなかったのです。賛美は聞く人の心に働きかける力があります。


 パウロは牢番が自害するのをとどめました。不思議な出来事をみた牢番は、パウロとシラスに「先生がた。救われるためには、何をしなければなりませんか。」と、心から救いを願い求めました。パウロとシラスは「主イエスを信じなさい。そうすれば、あなたもあなたの家族も救われます。」と教え、牢番とその家族はイエス・キリストを信じてバプテスマ(洗礼)を受けました。牢番は、パウロとシラスをもてなし、「全家族そろって神を信じたことを心から喜んだ」のです。賛美は、牢番とその家族にたましいの救いをもたらしました(使徒16:30-34)。


 二、賛美に力がある理由


 このように、賛美には大きな力があります。皆さんも、大きなことであれ、小さなことであれ、このような賛美の力を体験していることでしょう。家内と私は、どなたかを訪問するとき、とくに病気の方を訪問するときには、訪問用に作った賛美歌集を持っていきます。いっしょに賛美を歌ってから祈り、帰ってきます。多くの人が賛美によって励まされ、信仰に導かれてきたのを見てきました。


 しかし、賛美のこうした力はどこから来るのでしょうか。それは音楽が持っている力でしょうか。たしかに音楽には、人の心に安らぎを与えたり、元気を与えたりする力があります。しかし、賛美の力は音楽の力以上のものです。それは何でしょうか。


 第一に、賛美の力は賛美が伝えている真理の力です。どの賛美も、神の真理を歌っています。神の大きな愛を歌い、素晴らしい力をほめたたえています。神の救いのみわざを語り伝え、信仰の奥義を歌います。一般の音楽では自然の美しさや人間の素晴らしさを歌うことはあっても、神の真理を歌うことはありません。主イエスが言われたように真理には人を自由にする力があります。賛美に力があるのは神の真理を歌っているからです。


 第二に、賛美の力は賛美に表れた信仰の力です。最近NHKの中学生の合唱コンクールの様子を見る機会がありました。多くのグループが選択曲に宗教曲を選んでいました。中学生とは思えないほど上手に歌っていましたが、私はそこに何か足らないものを感じました。それは「信仰」です。宗教曲はそれを歌う人の信仰があってこそ賛美になります。信仰が無くて歌われるものは宗教曲のままです。聖書に、パウロとシラスはピリピの牢屋で「神に祈りつつ賛美の歌を歌っていた」(使徒16:25)とあります。「祈りつつ…歌う」とあるように祈りと賛美はひとつです。祈りがメロディーを伴って歌われるものが賛美です。


 きょうは賛美の力を感じ取ることができた礼拝でした。きょうの礼拝だけでなく、毎週の礼拝で、またクリスチャンの集まりで、日々の生活で賛美の力をもっと体験したいと思います。そのためには、歌詞をよく味わい、賛美が歌っている真理に心を留めましょう。賛美歌には、その歌詞のもとになる聖書の箇所がしるされていますから、その箇所を開いて味わうなら、より良い賛美をささげることができます。信仰の告白として、祈りとして賛美を歌い、それを神にささげましょう。そのようにして賛美の力を、もっと豊かに体験しましょう。


 (祈り)

 「主は、私の口に、新しい歌、われらの神への賛美を授けられた。多くの者は見、そして恐れ、主に信頼しよう。」神さま、あなたへの賛美を私たちの口に授けてください。賛美の歌を、あなたの真理を歌い、私たちの信仰を言い表す歌としてあなたにささげることができるよう、助けてください。主イエスのお名前で祈ります。


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