韓国宣教団体、北朝鮮の12~20ヵ所に秘密宣教拠点を構築


 

対北朝鮮宣教団体が北朝鮮内部で構築している秘密拠点が、平壌(ピョンヤン)をはじめ12ヵ所から20ヵ所にのぼることが分かった。

北朝鮮内部の事情に詳しいA氏は19日、宣教団体はこれまで中朝国境地帯の中国地域で行われていたレベルを超え、最近は北朝鮮全域の約20ヵ所に秘密拠点を設け、宣教師を秘密裏に派遣していると明らかにした。A氏は、「中国国境に近い北朝鮮の内陸地方を中心に、平壌まで進出したようだ」と伝えた。また秘密拠点のことを「コンパウンド(compound)」と表現した。

北朝鮮に対する宣教団体のうち最大規模とされるモトゥンイドル宣教会の柳錫烈(ユ・ソンリョル)理事長は、秘密拠点を「基地」と表現した。同宣教会の関係者は、「平壌、海州(ヘジュ)など、北朝鮮全域の12ヵ所に担当の宣教師を任命し、基地を構築している」と明らかにした。同宣教会が北朝鮮内部に派遣する宣教師は、10年から15年の間、対北朝鮮宣教に身を投じてきた人々だ。彼らは主に米国、欧州、中南米諸国の韓国系市民権者で、対北朝鮮実業家として活動しているという。

A氏によると、彼らは工場や農場を運営しながら秘密拠点を中心に宣教活動をしている。職員に聖書や生活必需品を与えたり、北朝鮮内の地下教会の信者に生活費も渡したりしている。北朝鮮内に建設する建物を統一後に教会に使えるよう設計するケースもあるという。

中国国籍(漢族や朝鮮族)の宣教師は、北朝鮮で飲食店を経営しながら宣教活動をしているという。柳理事長は、「飲食店を拠点に教会信者を集めて教育している。中国国籍の人は北朝鮮の人も軽く見ることはできない」と話した。彼らを取り締まることは難しいということだ。

彼らの活動は、北朝鮮当局に見つかれば抑留される危険にさらされている。対北朝鮮宣教活動をしているB牧師は、「(宣教活動をして、宣教師が)死ぬことも、捕まられることもあるが、そのような状況を具体的に明らかにすることはできない」と話した。柳理事長は、「宣教師の活動は非常に危険で困難だが、北朝鮮の地下教会がある程度根をおろしている状況で、持続的に運営するには、宣教師が北朝鮮に行くほかない」と述べた。

主に中朝国境地帯の中国地域で行われていた北朝鮮に対する地下宣教活動が、北朝鮮の食糧難が緩和され、脱北者に対する北朝鮮当局の取り締まりが強化されたことで、最近、北朝鮮内部に視線を向け始めたことに対し、柳理事長は、「北朝鮮宣教のパラダイムが変わりつつある」と強調した。

モトゥンイドル宣教会によると、咸鏡北道(ハムギョンブクド)地域には、ある村に地下教会信者が70%から80%に達する所もあるという。特に、人民保安部と国家保衛部の課長級や中・下級の幹部の中にも、地下教会信者がいて、5、6人規模の地下教会礼拝に参加するケースもあると伝えた。

同宣教会は、04年頃から「北朝鮮語の聖書」を作り隠密に北朝鮮に送っている。在米聖書学者が脱北者とともに作った手の平ほどの大きさの聖書の黒い表紙には、何のタイトルもない。同宣教会は、食糧を得るためや知り合いに会うために中国に来た北朝鮮住民を通じて、毎年少なくとも4万冊から5万冊、多くて10万冊を北朝鮮に隠密に運んでいる。朝鮮族が商人を装って北朝鮮に入り、コメや服を渡し、聖書を配布したりしているという。

宣教会の関係者は、「中国の中朝国境地帯で聖書教育を受けて北朝鮮に戻った北朝鮮住民が数万人にのぼり、彼らを中心に北朝鮮の各地に地下教会が生まれている」と述べた。A氏と柳理事長は、北朝鮮内の地下教会信者の数を30万人から50万人と推算した。彼らは、「北朝鮮内の地下教会信者の増加は、宗教同然の金正日(キム・ジョンイル)体制が幻想ということを住民に悟らせ、北朝鮮社会が変わるモメンタムになるだろう」と述べた。

これに対抗して北朝鮮は最近、宣教活動に対する取り締まりを強化しているという。柳理事長は、「北朝鮮当局が、地下宣教を米国の核よりも体制を脅かす要因と感じているという話もある」と述べた。A氏は、「昨年末、北朝鮮当局が外国国籍の実業家に戻るように通知すると、取り締まりの気配を感じた宣教師が戻らないケースもある」と伝えた。