中国のキリスト教の現況
概説
中国には古くからキリスト教が伝来しているが、長い間儒教および共産主義のイデオロギーによる、さまざまな形態および強度の宗教活動の制限や監視がされている状態が継続していた。しかし、改革開放政策の進展よる経済格差や情報通信の発達などにより共産主義イデオロギーの絶対性が崩壊し、それに代わる精神のバックボーンとしてのキリスト教への帰依が都市部を中心に急速に進展しはじめた。そして、爆発的な浸透を農村部の深部や辺境地まで広げつつ教勢を増している最中であると伝えられている。
教会規模・教派
現代の中国のキリスト教徒は、ブリタニカ国際年鑑の最新データによると中国の人口の7-7.5%で9100-9750万人程度と記録されている。しかし、在米の中国人人権活動家や在日本の中国人ジャーナリストなどの知識人が把握している直近の状況では当局の監督下にある国家公認教会と非公認教会の合計が人口の10%を超える段階に達しており1億3000万人を超えているという情報が有力である。現在、中国ではカトリック系統のキリスト教を「天主教」、プロテスタント系統のキリスト教を「基督教」または「耶蘇教」と呼んで区別している。ロシアなどから正教会も伝わり、これは東正教と呼ばれている。香港ではニキタス府主教のもとで正教会の活動が活発である。中国正教会は黒竜江省ハルビン市、新疆ウイグル自治区ウルムチ市および同自治区の伊寧市には参列することのできる教会を有し、近年は内蒙古自治区アルグン市、新疆ウイグル自治区チョチェク市での教会再建も進んでいる。正教会の聖職者の活動は公認されていないが、中国人正教徒でロシアにおいて按手され聖職者になった者、あるいは中国国外から到来した正教の聖職者が洗礼等の機密を行う事例が相次いでいる。北京市朝陽区にも一定数の正教徒がいる。エベンキ族およびダフール族の一部も正教の布教を受け、その儀礼を保っている。また、北京のロシア大使館内にも正教会が建設されている。
政府公認の教会組織
- 中国基督教三自愛国運動委員会:中華人民共和国政府公認のプロテスタント系キリスト教の世俗的な面での指導機関
- 中国正教会:中華人民共和国政府公認の正教会。中華人民共和国政府に公認された聖職者は近年すべて逝去した。
中国では、カトリック系の公認教会である中国天主教愛国会の信者は500万人、プロテスタント系の公認教会である中国基督教三自愛国運動委員会、中国基督教協会の信者は1700万人から1800万人とされる。
この他多数の地下教会(中華人民共和国政府はカトリック教会のバチカン市国と国交を断絶しているため、バチカンの影響下にあるカトリック教会を、非合法組織として取り締まりの対象としている)信者がいるとされている。中国国内のキリスト教徒は全部で6000万人以上存在するといわれるが、その3分の2は非合法の地下教会の信者で、取り締まりの対象となっている。全能神のような、キリスト教系の新宗教も信者を増やしている[1]。
現代中国における宗教政策
現代の中国では、中華人民共和国政府は憲法で中国人民の信教の自由を保障しているが、一方で外国の影響を受ける宗教組織の活動は認めない方針を採っており、政府が公認しない教会は政府の登録を受けられない地下教会となっている。
他方、教派によっては、中国政府の公認団体が任命した聖職者を自派の中国における正当な指導者と認めず、破門するなどの動きもある。
中国共産党の幹部クラス党員やその家族の間にも広範かつ急速なキリスト教入信の流れがあり、日々勢いを増しているために、中国政府は現実的な落とし所を探っており、特に、バチカンとの関係修復に積極的な動きを見せている。しかし、バチカンには中華民国との国交があり、関係正常化のハードルになっている状況にある。
中国政府は香港でイギリス領時代から一定の影響力を維持している香港カトリック教会の重鎮である陳日君枢機卿にバチカンとの仲介を依頼しようとの動きを見せているが、陳枢機卿は中国政府の宗教政策を批判して仲介を拒絶している