キリスト者の献身
- マタイ4:1822 -
献身というのは、神の召命に応えて,神の御旨のままに生きるべく,自らの意志を明け渡して,その身をささげることである.
1.狭義の場合 ;ある人が,何かの職業,立場,身分を持っていたが,それを捨て,そこを離れて,特に神の家,神のみことばへの奉仕に,その生涯をささげることを意味する.
⑴ 旧約聖書の例
① モーセは,ミデヤンの荒野で羊を飼っていたが,燃える柴の中から語られた主の召命に応じて,イスラエル救出の使命のために,40歳からの生涯を神にささげた。(出3章)
② ギデオンは,ミデヤン人を恐れ,酒ぶねの中で小麦を打っていたが,主の使いの召命に応えて,神の民の救いのために立ち上がり,その身をささげた。(士6:1140)
③ イザヤは,ウジヤ王の死んだ年に,親しく主の顕現に接し,汚れをきよめられ,反逆の民イスラエルへの宣教のため,その身をささげた。(イザヤ6:18)
④ エレミヤは,青年時代,神のことばに接し,神の命ぜられる所へはどこにでも行き,主の語られることは何でも語るという使命に,その生涯をささげた.(エレミ1:110)
⑤ アモスは,ユダで牧者として,またいちじく桑の栽培者として生活していたが,「イスラエルに預言せよ」との召命に従って,主のことばを宣べ伝える者とされた。(アモス7:1417)
⑥ ヨナは,主の命令に聞き従わず,逃亡しようと企てていたが,大魚の腹の中で悔い改め,ニネベ宣教のため,その身をささげた。(ヨハ13章)
⑵ 新約聖書の例
① ペテロたちは,ガリラヤの漁師であったが,主イエスの召命に応じ,「人間をとる漁師」として,その生涯をささげた。(マタイ4:1822,マルコ1:1620)
② 取税人マタイは,主の召命に応えて,収税所を後にし,イエス․キリストに従った。(マタイ9:9)
③ パウロは,教会の迫害者であったが,復活の主にお会いし,その召命に従って,宣教のためその身をささげた。(使9:119,22:121,26:520)
⑶ 教会史上の人物
アウグスティーヌス,ルター,カルヴァン,ウェスリ,スパージョンなどの例が挙げられる.
2.広義の場合;直接,神のことばの宣教に携わらないとしても,神の民はすべて,神のみこころに生きるべく,その身をささげることが求められている。(ローマ12:1)
⑴ 旧約聖書の例
① エステルは,王妃の身分を離れたわけではなかったが,ユダヤ人を救うため,王のもとに行き,とりなしの使命を果した。(エステ4:16)
② シャデラク,メシャク,アベデ․ネゴの3人は,主に従おうと,命をかけた。(ダニエ3章)
⑵ 新約聖書の例
① プリスカとアクラは,教会のため,パウロのため,その身をささげていた。(ローマ16:3,4)
⑶ 教会史も,
① 神のしもべ,義の奴隷としてその身をささげた人々がいた。(ローマ6:1223)
3.特別の場合
パウロは,異邦人への宣教の目的を述べて,「それは異邦人を,聖霊によって聖なるものとされた,神に受け入れられる供え物とするためです」と言っている。(ローマ15:16)
4.イエス․キリストの場合
1.- 3.までのあらゆる場合を通じて,そこには,「イエス․キリスト御自身の献身」という基礎が据られている.キリストは,その生涯を「仕える者」としてささげ尽し,また,十字架にかかって,その身を贖いの代価とされた。これが泉となって,そこから,他のあらゆる種類の献身がわき出るのである.(マタイ20:28,マルコ10:45,ピリピ2::611)