祈りについて(1/4)
- ピリピ4:6, 7 -
祈りは,神と人との交わりであり,私たちが神に帰さなければならない感謝の本質的表現である.キリスト者の祈りは,万物の創造者であり,主権をもってすべてを導き,私たちの祈りを聞いてくださる方であるという,明確な対象を持っている.
1.祈りの対象
⑴ 祈りの対象は,父なる神,御子イエス․キリスト,そして御霊なる神,すなわち三位一体な る神のみである.
⑵ 自然現象,偶像,人間,死者,悪霊,サタンはもちろんのこと,聖人や天使でさえも,祈り の対象とはされ得ない.
2.祈りの種類
⑴ 賛美の祈り
神による創造の不思議,その摂理の偉大さ,贖いのあふれる恵み,永遠の御国の栄光などに 心を向ける. (詩19:1,ローマ11:33, 36)
⑵ 感謝の祈り
すでに受けた恵みを思い起し,今その中に置かれている神の愛を覚え,それらが永遠に変ら ないことを信じてささげられる.(詩103:2,ルカ17:15、 16)
⑶ 罪の告白の祈り
犯した罪を,そのまま,ありのままに神に申し上げ,赦しを請う.(詩32:5,Ⅰヨハネ1:9)
⑷ 願いの祈り
幼子が父に願い求めるように,自らの必要としている事柄を神に打ち明けて,願い求める.(マタイ7:11, ピリピ4:6, 7)
⑸ とりなしの祈り
自らのためにでなく,他者のために願い求める.(ローマ8:34, Ⅰテモテ2:1)
⑹ 導きを求める祈り
何かの決断を迫られた場合,神のみこころに添う選択ができるようにと祈願する. (創24:12,詩25:4,8,12)
⑺ その他,献身の祈り,静かな交わりの祈りなどが挙げられる.
3. 祈りの動機
⑴ 人は神によって造られた存在であり,しかも神の「かたち」に創造されたので(創1:26)、祈りによって神と交わりたいという願望を,本性として持っている.
⑵ さらに,
① 神の栄光によって、祈りに導かれる.
② 神への愛によって、祈りに導かれる.
③ 神の命令によって、祈りに導かれる.
④ 人生における喜び,悲しみ,悩み,問題などに迫られて,祈りに導かれる.(詩50:14,15)
祈りについて(2/4)
- ダニエ6:10 -
祈りは何よりも,神が私たちに求めていることであり,また祈りこそ,神に生かされている
者の信仰そのものの姿である.
4.祈りの姿勢
⑴ 立って,両手を天に差し伸べて祈る.(Ⅰ列8:22)
⑵ 腰掛けて,やはり両手を天に上げて祈る.(出17:12)
⑶ ひざまずいて祈る.(使20:36)
⑷ うつ伏せになって祈る.(ルカ18:13)
⑸ その他,歩きながらでも,寝たままでも,どんな姿勢でも祈ることができるし,祈るよう勧 められている.
5.祈りの時
⑴ ダニエルは「日に3度」祈っていた。(ダニエ6:10)朝,昼,晩に,祈りの時が聖別されていた のであろう.
⑵ ダビデも,朝の祈りの詩篇(3篇),夕べの祈りの詩篇(4篇)を作っている.
⑶ 主は,「朝早くまだ暗いうちに」祈る習慣を持っておられた。(マルコ1:35)大事な時に は,徹夜で祈り抜かれた。(ルカ6:12)
⑷ 使徒たちは,「午後3時の祈り」を守っていた。(使3:1)
- このように,一定の時間が取り分けられ,祈りに専心することも必要であるが,同時に, 「絶えず祈りなさい」(Ⅰテサロ5:17)と勧められているように,あらゆる時間が祈りの時とな り得る.
6.祈りの場所
⑴ 公同の祈りの場所
① 幕屋,神殿,教会堂というような「祈りの家」ばかりでなく,一般の住居もその場所とな
り得る.
② それに加え,山,川,野原のような自然界も,その適切な環境となる.(ルカ6:12,使16:13,マタイ4:2)
③ 人々を避けた,静かな場所が理想だが,雑踏の中でも,祈りは可能である.
⑵ 個人の祈りの場所
① 主は,「奥まった部屋」で「戸をしめて」祈れと命じられた.(マタイ6:6)
② その他,⑴ で挙げたすべての場所が,個人の祈りの場所となり得る.
7.祈りの型
⑴ 定型文による祈り
礼拝における「主の祈り」,バプテスマや聖餐式における祈祷文,結婚式․葬式等における 式文の祈りなどがこれに属する.
⑵ 自由な祈り
定まった型にとらわれず,心に思い浮ぶまま祈るものであり,それがことばにならない時に は,① 黙祷,あるいは,② 静かに神と交わることとなり,ことばに出してささげられる時 には,③ 会話の祈り,その他,2.に挙げた様々の種類の祈りとなる.
祈りについて(3/4)
- ヨハネ14:14-16 -
祈りは恵みと真実とをもって招かれるまことの神に,思いにおいて,また多くの場合ことばをもって,近付き,その神と,いのちの交わりを持つことである。
8.祈りの答
⑴ 聞かれる祈り - 聞かれる祈りには,次のような条件が必要である.
① みこころにかなう.(Ⅰヨハネ5:14)
② 主イエス․キリストの御名によってささげられる.(ヨハネ14:14)
③ 御霊によってささげられる.(ローマ8:26)
④ ねばり強さ.挫折せずに,夜昼いちずに,熱心に求める.(ルカ18:5,7)
⑤ 心を合せる.一同が一つ心になって祈る.(マタイ18:19,使4:24)
⑥ 不義を離れ,悔い改める.(Ⅱ歴33:113,箴15:8,イザヤ59:1,2,ルカ18:13,14,ヤコブ5:16)
⑦ 幼子のように求める.疑いを交えず,確信をもって祈る.(マルコ11:23,24,ヤコブ1:6,7)
⑵ 聞かれない祈り
① ⑴に挙げた条件を満たしていない場合のほか,神の愛と全知とにより,祈りが「却下」され,最善の道に導かれることもある。(ローマ8:28,Ⅰヨハネ3:20)
9.聖書の中に見られる祈り - 有名な箇所を挙げれば次のようになる.
⑴ 感謝,賛美に関係する祈り
① モーセは,エジプト脱出に成功した直後,主に感謝し,主を賛美した.(出15:1ー18)
② デボラは,カナンに対する勝利を収めた時,主をほめたたえた.(士5:1ー4)
③ ハンナは,その子サムエルが与えられた時,この祈りをささげた.(Ⅰサム2:1ー10)
④ ダビデは,そのすべての敵から救い出された時,主を賛美した.(Ⅱサム22章,詩18篇)
⑤ マリヤは,聖霊によって主を宿した時,神を賛美した.(ルカ1:46ー55)
⑥ ペテロは,救いの恵みのゆえに,神を賛美した.(Ⅰペトロ1:3ー5)
⑦ パウロは,キリストにあるすべての霊的祝福を覚えて,神を賛美した.(エペソ1:3ー14)
⑧ パウロは,苦しみの時に慰めを与えて下さる神を賛美した.(Ⅱコリン1:3,4)
⑨ その他,随所に,頌栄,祝祷などが見られる.(ローマ16:25ー27,エペソ3:20、21)
⑵ 罪の告白に関係する祈り
① エズラは,神の民が結婚についての神の戒めを破った罪を神に告白した.(エズラ9章)
② ネヘミヤは,イスラエルの犯した罪を告白して祈った.(ネヘミ1:4ー11)
③ ヨブは,無知と愚かさをいたく思い知らされ,悔い改めて祈った.(ヨブ42:1ー6)
④ ダビデは,自らの姦淫と殺人の罪に目覚めさせられ,その罪を告白して祈った.(詩51篇)
⑤ イエスのたとえの中で,取税人は,胸をたたいて,自らの罪を告白している. (ルカ18:13)
祈りについて(4/4)
- 創32:912 -
9.聖書の中に見られる祈り - 有名な箇所を挙げれば次のようになる.
⑶ 願い,とりなしに関係する祈り
① アブラハムは,ソドムが滅ぼされることのないよう,とりなした.(創18:22ー33)
② ヤコブは,兄エサウと再会する前に,心を注いで,主に願い求めた.(創32:9ー12, 24ー29)
③ モーセは,イスラエルの民が金の子牛を造って拝んだ後,彼らのため,いのちをかけてとりなした.(出32:31ー34)
④ モーセは,イスラエルの民が,不信仰のゆえに約束の地に入って行こうとせず,反逆したため,神によって滅ぼされようとした時,彼らのために祈り求めた.(民14:13ー19)
⑤ ギデオンは,自分がイスラエルの救いのために用いられる器かどうかを確認するしるしを求めて,2度も祈った.(士6:36ー40)
⑥ ハンナは,男の子を授かるようにと,切に祈った.(Ⅰサム1:10,11)
⑦ ダビデは,世継ぎの子が与えられ,その王国の王座が永遠に確立されるという神の約束をいただいた時,その実現を願って祈った.(Ⅱサム7:1829,Ⅰ歴17:1627)
⑧ ソロモン王は,即位の後,知恵を求めて神に祈った.(Ⅰ列3:69)
⑨ 預言者エリヤは,カルメル山上で,天からの火を求めて祈った.(Ⅰ列18:36,37)
⑩ ヒゼキヤ王は,アッシリヤの王セナケリブの脅迫状を受け取った時,それを主の前に広げて祈った.(Ⅱ列19:1419,イザヤ37:1420)
⑪ ネヘミヤは,民のためにとりなし,祈った.(ネヘミ1:411)
⑫ ヨブは,苦しみの理由を聞かせて下さい,と祈った.(ヨブ10:222)
⑬ ダニエルは,ネブカデネザル王の見た夢と,その解き明かしとを求めて,友人たちとともに祈った.(ダニエ2:17ー19)
⑭ ヨナは,大魚の腹の中から,主に叫び,祈った.(ヨナ2:19)
⑮ ハバククは,神に疑問をぶつけて祈った.(ハバク1:24,1214)
⑯ 主イエスは,
ⓐ 弟子たちのために祈られた.(ヨハネ17章)
ⓑ ゲツセマネの園で苦闘の祈りをささげられた.(マタイ26:39ー44、マルコ14:35ー39、ルカ22:41ー44)
ⓒ 十字架上で,敵のために祈られた.(ルカ23:34)
⑰ ステパノは,自分に石を投げつけて殺そうとする者たちのために祈った(使7:59,60)
⑱ パウロは,キリスト者の目が開かれ,祝福に満たされるよう祈った.(エペソ1:17ー19、3:16ー19)
⑷ 導きを求めることに関係する祈り
① アブラハムのしもべは,イサクの花嫁となるべき女性のもとに導かれることを求めて祈った. (創24:12ー14)
② ダビデは,戦いにおいて,しばしば神の導きを求めた. (Ⅰサム23:2,4,11, Ⅱサム5:19,23)
③ エズラは,バビロンからエルサレムへの帰還の無事を神に願い求めた.(エズラ8:21-23)
④ エステルは,死を賭(と)してでも神の導きに従えるよう祈った.(エステ4:16)
⑤ パウロは,道が開かれることを求めて祈った.(ローマ1:10)
- その他,聖書中には,様々の祈りが満ちている.聖書は祈りの書でもある.