現代社会における倫理的な諸問題を考察の対象としながら,キリスト教の基本理念に親しんでいくことが,このクラスの目標です。 科学技術の急速な発展は,わたしたちの生活に対し,これまでの時代では考えられなかった様々な便利さをもたらすようになりました。しかし,同時に従来の道徳観や倫理では簡単に判断できないような新たな問題も生じています。
たとえば,生殖技術の進歩によって,人類は革新的な方法で生命を制御するようになりましたが,同時に「人間とは何か」「生命とは何か」という古典的な問いが新たな装いで発せられています。遺伝子診断や遺伝子操作,クローン人間,ヒトES細胞研究などに関する倫理的な課題が論じられていますが,キリスト教の人間観や倫理観はそれらの議論の質的向上にどのような貢献をすることができるのでしょうか。
また,現代の社会生活の表層的な変化とは対照的に,長い間変わらず,社会に温存されてきた差別の問題を見過ごすこともできません。人種・民族による差別,性による差別,身体的差異による差別などが生み出してきた苦悩を知ると共に,それらを克服する道を模索する必要があります。
さらに,社会環境だけでなく自然環境に対する人間の責任が今日厳しく問われています。1960年代以降,環境破壊とキリスト教的な自然理解の因果関係も指摘されてきています。キリスト教は,自然と人間の新しい関係をどのように提起することができるでしょうか。
このクラスでは,生命倫理・社会倫理・環境倫理などを縦断・統合する形で,新しい倫理の方向を模索しながら,その際用いられているキリスト教の基本的な考え方を丁寧に解説していきます。身近な素材からキリスト教神学の基礎を学ぶことを目指しています。なお,最新の情報を紹介するために,この授業ではインターネットを頻繁に利用します。
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