セムからテラへ、「テラの系図」が意味するもの


  はじめに




系図の原則は、最も重要な人物が一番最後に記録されているということです。これまでの見たアダムの系図の重要人物は大洪水後の新しい時代を担う「ノア」でした。ノアの三人の息子たちーセム、ハム、ヤペテから諸国の民が地上に分かれ出ますが、その三人の息子たちの中で最後に記されているのはセムの家系です。そしてセムの系図(11:10)はアブラハムの父テラへとつながっています。神はこのアブラハムを通して、「地上のすべての民族を祝福する」という計画を立てられたのです。

  • ちなみに、ノアはアダムから10代目。ノアの息子セムからアブラハムまでも10代です。ちなみに、イサクからダビデまでは13代です。アダムからダビデまでは33代。

画像の説明

1. 「テラの系図」が記されている意味

  • 「セムの系図」の最後に記されている名は「テラ」(原語は「テラハ」תֶּרַח)です。セムから9代目の「テラ」まで、まっすぐに流れています。そして創世記11章27節には「テラの系図」があります。この系図が記された目的はなんでしょう。これからの後、セムからテラのような流れではなく、救いの担い手がテラから生まれ出る者たちのかかわりを通して、つまり、
    アブラハムを中心とする親族による婚姻によって引き継がれていきます。驚くべきことに、アブラハムもイサクもヤコブもみなテラとつながる近親婚なのです。それを理解させるためにテラの家系が記されているだと思います。

    画像の説明
    画像の説明

  • 図で分かるように、アブラハムの妻「サライ」はテラの娘であり、アブラムの妹です。創世記20章12節からアブラムとサライは異母兄妹であることが分かります。イサクの妻となったリベカもアブラハムの兄弟の孫ですし、ヤコブの妻となるレアとラケルも母リベカの兄ラバンの娘たちなのです。


2. 真の救いの計画はアブラハムから始まる

  • 創世記11章までの系図の記録は、真の救済史的経綸の立役者となるアブラハムの存在を指向させるために、意図的に記されたものと言えます。
  • アダム以降、人類の歴史は罪の歴史であり、ひとたびノアの時代に洪水によってリセットしたものの、人間そのものの罪性はきよめられることはありませんでした。再び、人間の罪は全世界に拡散、増幅され、バベル塔の建設において神への反逆はその頂点を極めます。そして神はバベルの塔の建設に対するさばきを最後に、創世記12章からひとりの人、アブラハム(本当はアブラムですが、便宜上これからもアブラハムと表記します)を呼び出し、気の遠くなるような時間をかけて救いが展開されていきます。地上のすべての民族を祝福しようとする(救おうとする)神のご計画は、アブラハムを通して始められ、その子孫を通して成し遂げられていきます。
  • 創世記1~11章の系図は人間の絶え間ない罪による不信と反逆にもかかわらず、3章で預言された「女の子孫(単数)であるイエス・キリストにつながるアブラハムに焦点が当てられています。


創世記11章31節11:31
31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向かった。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。
32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。


※最下の図にある「カラン」は、新改訳第2版でそのように訳されていたためです。第3版では「ハラン」に訂正されています。原文は「ハーラン」(חָרַן)で、テラの息子の「ハラン」と同じ綴りです。

※なぜテラはウルから出かけて、自分の末息子と同じ名前の町ハランまで来てそこに住みついたのか。それは神の召命がテラにではなく、アブラムに対するものであったからです。

※テラがアブラムを生んだのは70歳の時です。アブラムがハランで神の声に従って旅立ったのは76歳の時、とすれば、その時のテラの年齢は146歳です。テラの生涯は205年とありますから、60年近くハランに住み着いて、そこで死んだことになります。使徒の働き7章4節ではアブラハムの旅立ちが父の死後のように語られていますが、実はそうではありません。アブラムは神の召しに従ってハランで父テラと別れたのです。つまり、「別れ」=「死」と考えられているのです。事実、アブラムが父テラと別れてから、一度も再会していません。テラはハランにとどまり、そしてそこで死んだのです。そう考えると、アブラハムが息子イサクの嫁を見つけるのに、なぜハランにいる親戚のところにしもべを遣わしたのか、腑に落ちるのです。つまり、テラに基づく近親婚による信仰の継承です。しかもテラは、アダムから数えて19代目の人物でした。

※「カルデヤ」と訳されたヘブル語は「カスディーム」(כַּשְׂדִּים)で、ティグリス・ユーフラテス川下流の地域を意味し、その地域に住む人々は「カルデヤ人」と呼ばれました。

※「ウル」(「ウール」אוּר)はアブラムの出生地です(創世記11:28, 31, 15:7、ネヘミヤ9:7)。同じ綴りで「火、炎」を意味する名詞があります。





肥沃な三日月帯  


画像の説明


族長アブラハムの漂泊の旅



http://meigata-bokushinoshosai.info/index.php?%E3%82%BB%E3%83%A0%E3%81%8B%E3%82%89%E3%83%86%E3%83%A9%E3%81%B8%E3%80%81%E3%83%86%E3%83%A9%E3%81%AE%E7%B3%BB%E5%9B%B3%E3%81%8C%E6%84%8F%E5%91%B3%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE